皆様に謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
多くの事業が中止あるいは延期を余儀なくされた苦難の一年が過ぎ、ことさらたくさんの希望を抱えて新しい年を迎えられた方も多かったかと存じます。協会としましても、新しい年にあらたな希望をもってさらに意欲的に事業に取り組んでいきたいと考えております。
昨年の数少ない収穫の一つは、オリーブオイルの輸入量や消費量が格段に伸長したことが挙げられます。在宅でのおウチ食・ウチメシが増えて家庭でのオリーブオイル消費の拡大が市場を押し上げました。もっとも、多くの皆様が想像される通り拡大したのはいわゆるコモディティといわれる普及価格帯の商品で、品質の優れたプレミアム市場の伸びは限定的です。
オリーブオイルソムリエ®的には、購買時に提供される消費者に向けた品質や風味のガイダンスが気になるところですが、残念ながら永年の課題にはほとんど手が付けられていないようです。
そこで、本年の新しい取り組みとして、消費者に向けたインターフェースの改善に手を付ける一年にしたいと考えています。協会にとってもこれは長年の課題であり、どこかで何らかの形で手を付けなければならない、と考えていたものでした。しかし、オリーブオイルの品質や風味個性は多様で数種類の類型化や単一の評価軸に収まらず、また肝心のその風味個性が時間とともに刻々と変化し、風味を評価した時点での特徴が比較的短期間で変わってしまうケースが多く想定されることなど、厄介な障害がいくつも存在し取り組む意欲を都度そいできました。しかし、消費が飛躍的に拡大するなかで、いま手を付けなければ取り返しのつかないことになるかもしれない、という想いが決意を強く促しここに実行に移すことを宣言することに至ったものです。
オリーブオイルにおける「消費者に向けたインターフェース」には様々なステージや方法論があります。最終的にはテクニカルデータも含めた栽培履歴から搾油工程などのトレーサビリティあふれる情報がブロックチェーン化されることが重要ですが、さしあたって今夜のカツオのタタキにあわせるオリーブオイルを店頭で選ぶことができない、という消費者の切実な悩みを解決することが先決と考えています。
つまり風味のプロファイルやスタイルが一目でわかるインデックスを付けること。風味特徴の統一表示化を目指す動きを始める、ということを意味します。ただし、やみくもに店頭に並ぶすべてのオリーブオイルを勝手に風味評価してステッカーを貼る、ということもできませんから、まずはOLIVE JAPAN®国際オリーブオイルコンテストで受賞したオイルに風味特徴の表示例をご提案し、生産者や輸入者が合意すればその表示をボトルに貼付できる、といったことから始めていきたいと考えています。
多くの受賞者がその表示を貼付明示するようになれば、店頭で購入時にカツオのタタキに合わせる最適なオリーブオイルを試食せずに買える、というシーンが生まれるわけです。そして、また〇〇の食材に最適なオリーブオイルはコレという概念が一般化すればおのずから品質を偽装する粗悪な品質のオリーブオイルは市場から淘汰されていく契機にもなるでしょう。
こうして統一表示の実現に向けて動き出すことを決定したわけですが、いまなお悩むのはその評価軸と類型化です。オリーブオイルソムリエ®ですから、オリーブオイルをテイスティングして風味の個性を何十種ものスパイスやハーブに例えて表現することはたやすいことですが、それをわかりやすいいくつかのタイプに類型化して明示する必要がどうしても生じるわけで、いったいいくつのタイプに分類して表示を行えばよいのか、悩みは深くなる一方です。
どうあれ、今年のコンテストの受賞者発表時には、単に金賞や銀賞だけでなく、大胆にもこうして分類類型化された風味の目安を表示して発表したいと考えています。また、将来はコンテスト受賞オイル以外にも拡大していくために、風味を評価鑑定する技術者を育成し風味の鑑別鑑定を行う資格者養成コースも開講したいと考えています。
大きな山に取り組む一年。休止した講座や地方開講もなるべく早期に復活させながら、多くの人たちがさらにオリーブオイルの素晴らしい世界に触れることができますよう、引き続き努力を重ねていきたいと考えています。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
一般社団法人日本オリーブオイルソムリエ協会
代表理事・理事長 多田 俊哉