皆さまには、すばらしい新年をむかえられたことと存じます。
日本オリーブオイルソムリエ協会も、数えれば早9回目のお正月を迎えることができました。これもひとえに会員の皆様を始め、協会を支えてくださる多くの関係者やスタッフの皆様のおかげに他なりません。改めまして、皆さまのご支援に深く感謝申し上げます。
毎年この年頭のご挨拶でも触れている通り、オリーブオイルの品質や販売現場をめぐる混乱は、残念ながら改善の兆しが見られません。マスコミやメディアでの紹介の機会も増え、テレビの料理番組や生活情報番組でオリーブオイルが取り上げられることも増えましたが、信頼できるとされた番組でも、例えばオリーブオイルの保管を冷蔵庫で…など誤った情報の流布が目立っています。
その一方で、日本市場に参入する海外ブランドのオリーブオイルは、協会創立当時からは比較にならないほど増えました。2012年に協会が日本で初めて開催した国際オリーブオイルコンテスト OLIVE JAPAN® 2012 では、出品数140品に対して日本で販売実績のあるものはわずかに20%に満たなかったのに対し、最新の2017年の開催では40%を超え、品目数も300品に迫る急拡大ぶりです。
数多くの生産者が日本市場に注目し参入されることは、一オリーブオイルファンとしては大変喜ばしいことですが、『のど元にささった魚の骨』のように、誤った情報の氾濫にとまどい居心地の悪い想いをされている会員や専門家の皆さんの想いは想像に難くありません。
特に品質基準を巡っては、昨年来より国際オリーブ協会(IOC)による業界への秋波がより一層顕在化し、品質基準に関する一種の「ダブルスタンダード」が日本に常態化してしまう深刻な脅威と危機感を強く感じています。
オリーブオイルを少しでも学んだ方々であれば、IOC基準が世界の主要生産地でまったく遵守されておらず、しかも仮にそれが規定通り遵守されたとしても、もともと緩い基準が現在の多くの生産者の目指す「品質」標準としては機能しないことは周知の事実ですが、『権威づけ』と『格式』を何よりも愛する方々には、消費者を導くために『国際オリーブ協会』のネームバリューは、この上もなく価値のあるものに映ったとしても不思議ではないでしょう。
これこそが、まさに消費者をミスリードする、欺瞞に満ちた詐欺行為以外何物でもないことに、こうした方々はおそらく自覚されているのでしょうが、私たちは、そうしたダークサイドに堕ちた勢力から消費者を全力で守らなければなりません。
ここで誤解のないように改めて強調したいのは、大量に消費されるコモディティ商品を前提とした「物量」があたかも「正義」のようにまかり通る、そんな市場を前に、私たちは、高価な、限られた人しか消費できない高価格高品質商品をプロモートするために活動しているわけではありません。
商品のほんとうの「価値」が、その商品の表示や表記、そして価格水準と見合った合理的な流通がオリーブオイルの市場において形成されること、そしてその上で、オリーブオイルに関する正しい知識と個々の商品の風味や味わいの違いを一つ一つの「価値」として消費者に正しく伝えることができること、これが「オリーブオイルソムリエⓇ」として私たちが目指すものです。
協会で学んだ多くのオリーブオイルソムリエ®たちが、こうした活動を市場で展開し、活発に消費者を導いて正しい市場の形成は初めて可能となる、と協会創設当初に抱いた信念はいまも微塵も揺らぐことはありませんが、そろそろ日本オリーブオイルソムリエ協会として、日本での品質『基準』に関する何らかのアクションを検討しなければならない時期に差し掛かってきていることを感じ始めています。
2017年は、初の海外開講となる台湾開講など、多くの新規事業に取り組みました。すでに2018年の主要事業に関する企画は概ね構築を終えていますが、今年一年は、さらにアクティブに内外に打って出なければならない年度になると考えています。主に業界従事者向けの新講座「オリーブオイルアドバイザー講座」の開設や生産者向けの搾油や栽培の講座に注力するほか、オリーブオイルソムリエ講座の講義内容を刷新し、時代の求めに応じていく所存です。そして、これまで以上の『品質詐欺』行為に関する危機感を感じながら、いまこそ私たちが総力を結集してオリーブオイルの真の素晴らしさを伝え、経験してもらい、また正しく市場を導かなけれならない時である痛感するものであります。
皆さまのさらなるご支持、ご支援に感謝しつつ、協会の業務に邁進していく決意とともに新年のご挨拶とさせていただく所存です。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
一般社団法人日本オリーブオイルソムリエ協会
理事長 多田 俊哉