あけましておめでとうございます。
皆さまには、すばらしい新年をむかえられたことと存じます。
日本オリーブオイルソムリエ協会も、数えれば早8回目の正月を迎えることとなりました。
一般に販売されているオリーブオイルの品質が「どうも怪しい」ということは、協会設立前には限られた専門家のみが知る業界内のみの公知だったわけですが、それが今日多くの消費者の知るところとなった背景に、協会の活動が少しでもあったのだとしたら、それは望外の喜びでもあります。
しかし、その一方で、そうした状況が改善されるどころか、数値の上ではますますひどくなっている実態には、同時に無力さを感じるとともに、まだまだ私たちの活動が道半ばであることを思い知らされます。
一方、誤解のないように強調したいのは、大量に消費されるコモディティ商品を前提とした「物量」があたかも「正義」のようにまかり通る、そんな市場を前に、私たちは、高価な、限られた人しか消費できない高価格高品質商品をプロモートするために活動しているわけではありません。
商品のほんとうの「価値」が、その商品の表示や表記、そして価格水準と見合った合理的な流通がオリーブオイルの市場において形成されること、そしてその上で、個々の商品の風味や味わいの違いを一つ一つの「価値」として消費者に正しく伝えることができること、これが「オリーブオイルソムリエⓇ」として私たちが目指すものです。
極めてあたりまえのことですが、これが実現できない背景には、さまざまな複雑な要因が絡んでいることを私たちは知っています。もちろん、その「要因」の中には、そもそも私たちの力ではどうしようもできないものもあります。しかし同時に、私たちは多くの方々に真実とほんとうの「価値」を「知ってもらう」ための活動を自由に展開できる恵まれた環境にあります。
2017年は、これまで以上に、多くの方々に「知ってもらう」活動を強化していきたい、と考えています。昨年はこの想いのもとに拙著『そのオリーブオイルは偽物です』(小学館)の出版に踏み切り、また協会が運営するOLIVE JAPAN国際オリーブオイルコンテストにおいても、その公式イヤーブックとなる『オリーブオイルの至福』(小学館)の上梓を行いました。幸にも、どちらの書籍も、たくさんの読者に受け入れていただき、私たちの想いが消費者からの期待とともにあることを改めて痛感いたしました。
こうした書籍によるコミュニケーション活動は今後も継続してまいりますが、今年はその活動の範囲を、さらに多くの消費者の目の留まるステージに拡大していきたいと考えています。
その一方で、販売店やレストランなどの拠点で情報を発信する専門家はまだまだ不足しています。私たちの活動の原点でもあり、その基本でもある教育事業、なかでも初級基本コースとなるジュニアソムリエコースや上級のソムリエコースの開講を重ねて、さらに多くの正しい「専門家」を世に送り出すとともに、すでに資格を取った方々の専門家トレーニングをより充実させてまいりたい所存です。
このために、オリーブオイルのテイスティング評価技術を磨く講座群を刷新し、あらたに「マスターテイスター」資格の設置も決定いたしました。
一年間は、長いようで短く、また短いようで長いようにも思えます。着実にゴールに向けてステップを積み重ねていくとき、一つ一つのステップは、永遠に時が続くように思える試練の連続ですが、乗り越えた後に付く道すじは、平坦で時の概念を超越しているように見えます。
私たちが試練であえぐこの瞬間も、質の悪いオリーブオイルを気づかないうちに騙されて買わされ、また、それと知らずに我慢して消費する消費者がいることを思うと、私たちはこの試練をいち早く乗り越えて、少しでも状況の改善を図っていかなければなりません。
一年たって、2017年が終わるころに、今年はここまで進んだという実感を、充実感をもって皆さまと分かち合える、そんな一年にしていきたいと思っています。
ことし一年間、皆さまには、引き続きいろいろとお世話になりますが、変わらぬあたたかいご支援をたまわれましたらと願っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
一般社団法人日本オリーブオイルソムリエ協会
理事長 多田 俊哉